「国宝 玄奘三蔵絵の世界」は、三蔵法師の生涯を記した全12巻190mの絵巻「玄奘三蔵絵(藤田美術館所蔵)」を、高精細画像で鑑賞できる「絵巻鑑賞サービス」です。奈良国立博物館と国立情報学研究所が共同で制作し、奈良国立博物館で開催した特別展「天竺へ 三蔵法師3万キロの旅」(会期:平成23年7月16日~8月28日)の会場内で公開しました。
「国宝 玄奘三蔵絵の世界」では、長さ約190mにわたる「玄奘三蔵絵」の全巻全場面を、フルハイビジョン画質の画像にて閲覧できます。また、代表的なシーンを10の場面構成でたどれる「テーマナビ」と、絵巻の画像をあたかも本物の絵巻のように連続で表示送りできる「絵巻ダイヤルナビ」の2つのナビゲーションを備えています。これら絵巻の閲覧に適したナビゲーションが、本システムの高精細画像描画技術と相まって、利用者を「玄奘三蔵絵」の世界へと誘います。
絵巻は本が普及するよりもずっと以前からあるメディアです。日常場面で実物を目にすることはあまりありませんが、数多くの絵巻が、今も文化財として美術館や博物館の収蔵庫に保管されています。
絵巻は長いものでは1巻あたり10mを超えます。そのため全場面を展示して閲覧に供することはめったになく、一般の利用者が内容を確認する機会は限られていました。連想情報学研究開発センターが開発した「絵巻鑑賞サービス」は、これまで閲覧が難しかった絵巻の全巻全場面の電子的な展示を可能にしました。
「絵巻鑑賞サービス」は、絵巻を繰りながら連続的に閲覧できる点に特徴があります。メディアとして一度は本に完全に駆逐されたかに見える「絵巻」ですが、「絵巻鑑賞サービス」による連続的な表現様態は、絵巻というメディアが現代にもたらす新たな可能性を拓くものと考えています。
会期:2011年7月16日~8月28日
場所:奈良国立博物館